2. プロ級音声に激変!DaVinci Resolve無料版での音声下処理 完全ガイド

動画編集において、映像と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「音声」です。「動画編集 爆速化ワークフロー講座」では、編集作業を始める前に、まず音声素材をクリアで聞き取りやすい状態に整えることを推奨しています。

ここでは、無料でありながらプロフェッショナルな音声編集機能を備えたDaVinci Resolveの「Fairlight」ページを使い、ノイズ除去、音質調整、音量調整を行う基本的な「音声下処理」のワークフローを、初心者の方にも分かりやすくステップ・バイ・ステップで解説します。

この工程を経ることで、後のCapCutなどの編集ソフトでの作業が格段にスムーズになり、最終的な動画の品質が飛躍的に向上します。


ステップ1:準備 〜 Fairlightページで素材を読み込む

まずはDaVinci Resolveで音声処理を行うための準備をしましょう。

  1. Fairlightページを開く:DaVinci Resolveの画面下部にあるメニューアイコンの中から、「Fairlight」(音符のアイコン)をクリックして、音声編集専用のページに移動します。
  2. 素材をタイムラインに読み込む:
    • PCのファイルエクスプローラー(Finderなど)から、処理したい音声ファイル、または音声が含まれた動画ファイルを、直接DaVinci Resolveの画面下部にある「タイムライン」のオーディオトラック(通常はオーディオ 1Audio 1と表示されています)上にドラッグ・アンド・ドロップします。
    • 【重要】作業トラックの確認:この音声素材が置かれたトラック(例:オーディオ 1)が、これから音声処理を行っていくメインの作業場所になります。

ステップ2:ミキサーパネルを理解する 〜 音声処理の中心地

Fairlightページでの音声処理は、主に「ミキサー」パネルで行います。まずはミキサーパネルを表示し、各セクションの役割を理解しましょう。

  • ミキサーを表示:Fairlightページを開くと、多くの場合デフォルトで画面右側に表示されています。もし表示されていなければ、画面右上のツールバーにある「ミキサー」ボタン(縦にフェーダーが並んだアイコン)をクリックして表示させてください。このボタンをクリックするたびに、ミキサーパネルの表示・非表示が切り替わります。
  • ミキサーの主要セクション(作業するトラック、例:オーディオ 1の縦列):ミキサーはトラックごとに縦長の「チャンネルストリップ」で構成されています。上から順に見ていきましょう。
    • 入力 (Input):(通常触らない)録音時の入力設定など。読み込んだファイルには影響しません。
    • トラックFX (Track FX):よく使うエフェクトへのショートカットが表示されることがあります。(例:Dial LevDialogue Leveler
    • 処理順 (Signal Chain Order):ミキサー内の主要な処理(EQ、ダイナミクス、FX)がどの順番で適用されるかを設定します。これは後ほど設定する重要な項目です。
    • エフェクト (Effects):ここがNoise ReductionLimiterなどの「Fairlight FX」を追加するメインの場所です。+ボタンから追加します。
    • エフェクトIn (Effect In):「エフェクト」セクションに追加した全てのFXを一時的にまとめてオン・オフ(有効・無効)にするスイッチです。エフェクト効果の比較確認に必須です。
    • ダイナミクス (Dynamics):標準搭載のエキスパンダー・ゲート、コンプレッサー、リミッター機能です。ダブルクリックで詳細設定が開けます。※本ワークフローでは、この中のコンプレッサー機能を使用します。エキスパンダー・ゲートとリミッターは基本的にオフにします。
    • EQ (Equalizer):標準搭載の高性能パラメトリックイコライザーです。音質調整の要となります。ダブルクリックで詳細設定を開きます。
    • バスセンド (Sends):(通常触らない)他のバスへ音を送る機能。
    • パン (Pan):音声の左右の定位(ステレオ感)を調整します。モノラル音声なら中央のまま。
    • バス出力 (Bus Output / Assign):(通常触らない)このトラックの最終的な出力先です。デフォルトのBus 1(メイン出力)のままでOKです。
    • VCA / グループ (Group):(通常触らない)複数のトラックをまとめて管理する機能。今回の基本処理では使いません。
    • トラック名:トラックの名前。クリックして変更可能。
    • R S M ボタン:
      • R:録音待機(今回は使いません)。
      • S:ソロ再生。このトラックだけを聞きたい時にオンにします。
      • M:ミュート。このトラックを消音したい時にオンにします。
    • オートメーションモードボタン(RSMの下の波線記号):(通常触らない)音量などの時間変化を記録・再生するモード切替ボタン。基本処理ではReadまたはOffのままでOK。
    • 音量フェーダーとメーター:縦のスライダーが最終的な音量を調整する「フェーダー」、その隣が音量レベルを示す「メーター」です。

ステップ3:推奨ワークフロー実践 〜 EQ・ダイナミクス・FX・音量調整

ミキサーの役割を理解したら、いよいよ音声処理を実践します。本講座推奨の基本的な処理手順は以下の通りです。内部処理の順番に合わせて調整していくことで、各ステップの効果を確認しやすくなります。

※最終調整は書き出し設定で行うため、ここでは目安程度でOKです。

  1. 処理順の設定:
    • 作業トラック(例:オーディオ 1)のミキサーにある「処理順」ボタンをクリックします。
    • 表示される選択肢の中から「EQ DY FX」を選択します。これにより、内部処理が「EQ → 標準ダイナミクス → Fairlight FX」の順で行われます。
  2. EQで不要な低域をカット(&音質調整): ←★まずEQから調整します
    • ミキサーの「EQ」セクション(グラフが表示されている部分)をダブルクリックして、EQの詳細設定ウィンドウを開きます。
    • ローカット(必須):ウィンドウ下部の「Band 1」をオン(赤色)にし、タイプが「ローカット(ハイパス)」アイコンになっていることを確認します。「周波数」を80Hzから100Hz程度に設定します。スロープは12dB/octaveで試しましょう。これでエアコンの音やマイクの吹かれなどの不要な「ゴロゴロ音」をカットできます。
    • その他の調整(任意):声に「こもり」を感じる場合はBand 23(ピーキング)で300Hz500Hzあたりを少しカット(ゲインを下げる)。「キンキン」する場合はBand 45(ピーキング)で2kHz5kHzあたりを少しカットします。逆に明瞭度を上げたい場合は、同じく2kHz5kHzあたりを少しブースト(ゲインを上げる)することも有効ですが、やりすぎに注意しましょう。
  3. 標準ダイナミクスのCompressorを調整: ←★次にダイナミクスを調整します
    • ミキサーの「ダイナミクス」セクションをダブルクリックして詳細ウィンドウを開きます。
    • ウィンドウ内の「コンプレッサー」セクションのスイッチをオン(点灯)にします。※「エキスパンダー・ゲート」と「リミッター」のスイッチはオフ(消灯)のままにします。
    • コンプレッサーの各パラメータを調整します。目安として、レシオ2:14:1程度、アタック早め(例:1.4ms)、リリースは声に合わせて(例:93ms)調整し、しきい値(例:-15.0dB)で圧縮量を決め、最後にメイクアップゲインで全体の音量を持ち上げます。
  4. Fairlight FXを追加・調整(Noise Reduction / De-Esser / Limiter): ←★最後にFXを追加・調整します
    • FXの操作方法(確認用):
      • 追加:ミキサーの「エフェクト」セクションにある「+」ボタンをクリックし、カテゴリから目的のFXを選択。
      • 設定表示:追加時に自動で開く。再度開くには、FX名にマウスオーバーし、中央の設定アイコン(スライダー3本)をクリック。
      • 無効化:FX名にマウスオーバーし、左端の赤丸電源アイコンをクリックして消灯。
      • 削除:FX名にマウスオーバーし、右端の下矢印アイコンから「プラグインを消去」を選択。
    • 推奨FXの追加と設定(この順番で):
      1. Noise Reduction(ノイズリダクション):(「Restoration」内)持続的な背景ノイズを低減。「自動」または「手動」+「分析」で調整。※かけすぎ注意。ドライ/ウェット(例:80.0%)で調整。
      2. De-Esser(ディエッサー):(「Restoration」内)歯擦音(サ行)が気になる場合に抑制。周波数(例:7kHz)と適用量(例:50.0%)を設定。「S音のみ」で確認。
      3. Limiter(リミッター):(「Dynamics」内)音割れ防止の最終段。「上限 (Ceiling / Threshold)」を-1.0 dBTP(または目標値)に設定。
    • FXの順番確認:追加したFXが「エフェクト」セクションに「Noise Reduction → De-Esser → Limiter」の順で並んでいるか確認。違えばドラッグで修正。
  5. エフェクト効果の確認:ミキサーの「エフェクトIn」ボタンや、各処理(EQ、ダイナミクス、FX個別)のオン/オフスイッチを使って処理前後の音を比較し、意図通りになっているか確認します。
  6. 音量フェーダーで最終調整(目安):
    • ミキサーの縦長の「音量フェーダー」を調整します。
    • ミキサー右側の「レベルメーター」を見ながら、会話部分の平均的な音量がだいたい-12dBFSから-6dBFSの間に収まるように調整します。
  7. ラウドネスメーターで確認(目安):
    • 画面右上の「ラウドネスメーター」を確認します。メーター右上の「・・・」メニューから、ターゲットとする規格(例:YouTube, EBU R128など)を選択。
    • 主要部分を再生し、統合ラウドネス(Integrated)True Peak (TP) の値を確認します。
    • 目安:例としてYouTube等は統合-14LUFS付近、TP-1.0dBTP以下。目的に合わせて基準値に近づける参考にします。
    • ※最終調整は書き出し設定で行うため、ここでは目安程度でOKです。

ステップ4:音声書き出し 〜 高品質WAVファイルを作成

Fairlightでの処理が完了したら、CapCutなどの編集ソフトで使うための音声ファイルを書き出します。ここでは、処理後の音声だけを高音質かつ適切な音量レベルに合わせた.wavファイルとして書き出します。

  1. デリバーページへ移動:画面下部のメニューから「デリバー」(ロケットのアイコン)をクリックします。
  2. 「Audio Only」プリセット選択:画面左上の「レンダー設定」で、「Audio Only」プリセットを選択します。(※または、慣れている方は既存のレンダー設定のまま「ビデオ」タブで「ビデオの書き出し」をオフにしても構いません
  3. ファイル名・保存先設定:「ファイル名」(例:プロジェクト名_音声処理済)と「保存先」を指定します。
  4. ビデオ設定確認:「ビデオ」タブを開き、「ビデオの書き出し」がオフになっていることを確認します。
  5. オーディオ設定(最重要):オーディオ」タブを開き、以下を設定します。
    • オーディオの書き出し:オン。
    • フォーマット:Wave
    • コーデック:リニアPCM
    • ビット深度:24(推奨)。
    • 出力トラック:Bus 1 (Stereo)。(Fairlightミキサーのメイン出力)
  6. オーディオノーマライゼーション設定(最終音量調整):ここで最終的な音声ファイルの音量レベルを決定します。配信プラットフォームや納品先の仕様に合わせることが非常に重要です。
    • 「オーディオ」タブの下部にある「オーディオノーマライゼーション」を展開します。
    • オーディオのノーマライズ」をオンにします。
    • モードは「標準にノーマライズ」。
    • 標準」ドロップダウンメニューを開き、ご自身の目的や配信先の規格に合わせて適切なプリセットを選択します
      • 例:YouTubeや多くの動画プラットフォーム向け:YouTube」を選択します。これにより、ターゲットレベルが-1.0 dBTP、ターゲットラウドネスが-14 LKFSに自動設定されます。
      • その他の規格:メニューにはNetflix、欧州放送連合のEBU R128、米国のATSC A/85など、様々な規格のプリセットが用意されています。目的の規格があればそれを選択します。
      • カスタム設定:もし特定のターゲット値(例:-16 LUFS, -1.5dBTPなど)が指定されている場合は、プリセットから選ぶ代わりに、ドロップダウン下の「ターゲットレベル」と「ターゲットラウドネス」の値を手動で直接入力して設定します。
    • 【重要】選択または設定したターゲットレベル(dBTP)とターゲットラウドネス(LKFS)の値が、ご自身の目的と合っているかを必ず確認してください。
  7. レンダーキューに追加:設定が完了したら、画面下部の「レンダーキューに追加」ボタンをクリックします。
  8. 書き出し実行:画面右側の「レンダーキュー」に追加されたジョブを確認し、「すべてレンダー」ボタンをクリックして書き出しを開始します。
  9. 完了確認:レンダリングが完了したら、指定した保存先に.wavファイルが作成されていることを確認します。

【効率化Tips】ミキサー設定をテンプレート化して時短!

毎回同じような音声素材(例えば、自分のナレーションなど)を処理する場合、今回設定したFairlightのミキサー設定を「テンプレート」として活用することで、作業時間を大幅に短縮できます。

重要なポイント:Fairlightのミキサーで行った設定(EQ、ダイナミクス、追加したFairlight FXとそのパラメータ)は、タイムライン上の個々の音声ファイル(クリップ)に直接適用されているのではなく、その音声ファイルが置かれている「オーディオトラック」に対して適用されています

つまり、一度あなたの声や録音環境に合わせて最適なEQカーブ、コンプレッサー設定、ノイズリダクション設定などを「オーディオ 1」トラックのミキサーで作り込んでしまえば…

  • 次回、新しい動画の音声処理を行う際には、前回使った古い音声ファイルをタイムラインの「オーディオ 1」トラックから削除します。
  • そして、新しく処理したい音声ファイルを、同じ「オーディオ 1」トラックにドラッグ・アンド・ドロップするだけです。

これだけで、前回作り込んだミキサー設定(EQ、ダイナミクス、FX)が新しい音声ファイルに自動的に適用された状態からスタートできます!

※もちろん、録音した日の声の調子や、わずかなノイズ量の違いなどによって、EQの微調整、ノイズリダクションの再分析や適用量の調整、コンプレッサーのしきい値(スレッショルド)の微調整などは必要になる場合が多いです。しかし、毎回ゼロから全てのエフェクトを設定し直す手間が省けるため、作業効率は劇的に向上します。

ぜひ、自分だけの音声処理テンプレートを作り上げて、爆速化ワークフローに役立ててください。


まとめ:処理済み音声を次工程へ

お疲れ様でした!これで、DaVinci ResolveのFairlightページを使った基本的な音声下処理と、ターゲットに合わせたレベルでの音声書き出しが完了しました。

この高音質で聞き取りやすく、適切な音量レベルに調整された.wavファイルを、メインの編集ソフト(例:CapCut)に読み込み、映像素材と同期させることで、編集作業の効率と最終的な動画のクオリティが大幅に向上します。

最初は難しく感じるかもしれませんが、この手順に慣れることで、音声処理はルーティンワークとしてスムーズに行えるようになります。ぜひ、あなたの動画制作ワークフローに取り入れてみてください。

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